早見和真の『八月の母』!
愛知県伊予市…
母の存在に悩まされ、「いつかは必ずこの街から出て行きたい!」と願っていたエリカは結局、母を捨てることが出来ずにいた…
孤独だったエリカは人がたくさん集まる笑いの絶えない家庭に憧れ、自分の長女、長男、次女と住む団地の1室を、自宅に居場所がないなどの訳ありの少年少女を自由に住まわせ、自分の子供のように分け隔てなく可愛がっていたが…
長女の嫉妬心から、その団地に出入りしてエリカに特に可愛がられていた紘子が少年少女達の暴力の的になり、それがどんどんエスカレートし、紘子はエリカの次女を守るために団地から逃げ出さず、ひたすら耐え、うだるような暑さだった八月、遂に息絶えてしまう…
その事件の後、紘子に守られたエリカの次女の陽向は、紘子の
「自分の人生は誰かのためにあるわけやない。
生きることを絶対に誰かのせいにせんといて。
あなたの人生はあなただけのものやから。
それだけは誰にも、ママ(エリカ)にもふれさんといて。」
の言葉を胸に必死に自分の幸せを求めて生きてきた…
陽向は幸せをつかみ取れたのか?
母(エリカ)を断ち切ることが出来たのか?
…
この物語はフィクションですが、2014年に実際に起きた事件をベースに描かれているようです!
負の連鎖を断ち切る事の難しさ、集団心理の恐ろしさ、母と娘の鎖…
とてもとても重い話で、読んでいて辛かったです💧
どうしてあの時、逃げなかったのか?
どうしてあの時、助ける事が出来なかったのか?
どうしてあの時、止めることが出来なかったのか?
どうして、どうして…がとても多いけど、小学生、中学生、そして高校生くらいになっても、まだ子供の彼らを取り巻く世界はとても狭くて、その時はどうにもならなかったんだろうなぁ。。。
こんなやり切れない事件があっても、陽向が負の連鎖をキッチリ断ち切って、幸せに向かって生きていこうとするラストで少し救われましたが、「どうして?」が残る読後感でした。。。